第3章 鎖を切る

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な、何してんだ。 あの白い奴。バカじゃねぇの? あんな枝切れでどうやって人間に立ち向かうっつうんだよ。 獣なのに、何してんだよ。 なんで、戻ってきたんだよ。 同じ獣の俺がここで人間に痛めつけられてる間に、お前は逃げられたのに。 武器になりそうなもの探しに、ここを離れただけだなんて。 人間にしてみたら、獣が一頭でも二頭でも関係ない。 野獣だろうが わざとじゃなく間違えてナイフを人に向けたんだろうが そんなのどうでもいいこと。 「おいっ! 黒いの!」 「!」 白いのが凛とした声を張り上げた。 「お前、混血なんだな?」 「……」 「おいっ! どうなんだ!」 ぎゅっと手でただの枝切れを握り締めて、月明かりの中で異様に光る金色の瞳で目の前にいる人間を睨みつけてる。 人間の手には大きな斧、どう考えたって枝切れで敵うわけがない。 あの斧を振り下ろされたらって想像しただけで恐怖で身が竦みそうになる。 距離をじりじりと詰めてこられて、暴れ出したくらいに怖い。 でも、鎖で繋がれているから逃げる場所なんてない。 こいつは首輪してても、今、ここから走り出すことができるのに、それなのに逃げずに枝をそいつらに向けてる。 バカなんじゃねぇの。そんなのでどうすんだよ。 「おい! バカ!」 白いのが叫んだ。バカはお前だろっ。さっきの言葉が頭の中でこだまする。 ――考えろ。 俺は物を違う形に変化させられる。 でも、そんなん、一時でしかねぇんだよ。 戦ってる最中に剣が枝に戻ったらどうすんだよ。 その瞬間、身体は真っ二つだ。 痛いし怖い。 逃げ出したい。 ――前を見ろ。 前を見たって、人間がふたり斧を持ってる。 「お前! 術でなんでも一時変化させられるんだろっ?」 「で、でもっそれを剣に変えたって」 「俺は妖魔だ!」 だからなんだよ。俺だって妖魔の血が半分入ってるっつうの。 「くそっ」
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