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吐き捨てるように俺も白いのも舌打ちして、白いのは俺へ探し出したひょろりとした枝切れを向け、俺はその枝切れに向かって手をかざす。
「こえぇって!」
なんか、もうよくわからず呟いていた。
怖いに決まってる、獣の力なんて微々たるものだ。
せいぜい見世物として使われるのがやっと。
これだけでかい鉄の塊でできた斧の一太刀に敵うわけがない。
人間だってそう思っているから余裕の顔をしている。
「早くしろっ!」
「わかってるよ! 集中できねぇんだよ!」
心が恐怖にざわついて手がカタカタと小刻みに震えていた。
いつもと同じだ。
そう思えば思うほど、今まで呑気に見世物として披露していたのとはわけが違うって感じる。
「おいっ!」
「わかってる!」
白い奴の瞳がギラギラしていた。
命が崖っぷちにしがみ付いて必死になっている。
その目は金色に輝いて、強くて、今日はやたらと大きく見える月なんかよりもすげぇ存在感。
そうだ。ナイフ。
俺、こいつの銀色の髪を見て、昼間の店でナイフを出したんだ。
それでこんなところに繋がれて、銀色の鎖をこいつが誰かに見られたせいで、こんな騒動に巻き込まれてる。
本当だったら、あの時、白い馬かなんかを出してみせて、金稼いで、主が上機嫌なら部屋の隅を寝床にできた。
退屈な、娼婦との情事見学に付き合わされながら。
なんか、ムカついた。
こえぇって感情よりも巻き込まれてることへのムカつきのほうが勝ってでかくなっていく。
そして張本人が持っていた枝はそのギラギラ光る瞳と同じ黄金色の剣となり、枝からひょろりと飛び出した小枝と葉は手錠になった。
「上出来だ……」
白いのはニヤリと笑い。
眼光をもっと鋭くして、その目に力を込める。
と、瞬く間に白い奴の周りを青い光みたいな霧みたいなものが立ち込め、その霧がふわりと俺が作り変えたばかりの剣と手錠にまとわりついた。
「おいっ! 白いの! 来たぞ!」
ヤバいって思ったんだろ。
人間が血相を変えて斧を振りかざしながら走ってきた。
俺もこれはって思った。
なんか、すげぇって。
「あぁ、わかってる」
白いのはニヤリと笑い、出来立ての剣をでかくまん丸な月に突き刺すように真っ直ぐかざし、それを俺へと振り下ろした。
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