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息を呑んだ。
――ああ、だから勤番交代の兵を連れ戻し、兵の数を増やしたのか!
大和屋焼き討ちは、都合のいい隠れ蓑ってこった。
「当然、毛利軍も抵抗するであろう。すでに兵を集めているとも聞く。
三日後の十八日夜半、御所内より禁門を全て封鎖する。
この警固に浪士組も参加なされよ」
この後、山南さんらは先に帰され、近藤さんと俺はこの場に残った。
外島殿もこの場を退席され、部屋には田中殿と三人であった。
「その者らは、郷士の出か?」
「いえ、惧れながら百姓にござりまする」
今更の問いかけに、我らは頭を下げた。
「芹沢は水戸の天狗であろう。
此度の戦、あの者に指揮させると良い。
勤王の志士じゃ。存分に働いてくれよう。
近藤、決断するのはその後で良いぞ」
田中殿の言葉に含められた真意を、一つたりとも聞き逃すまいと、俺は何度も頭の中で復唱した。
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