思ひ出

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「あんさん、今年も綺麗に咲きましたなあ」  毎年、女房が褒めてくれる。  そうやなあ、今年も綺麗に咲いた。  趣味で集めた花もの盆栽は、梅の花が多かった。中でも紅梅は、あの人を想って集めたものばかりだ。  女房はもちろん知らない。  忘れようにも忘れられないひと。若かりし日の恋は、今も痛みと憧憬を持って思い出されるのだ。  あの人は、「自由」やった。  あの頃の自由は、今、政治家や偉い先生らが使うリバティとかフリーダムやない。勝手で奔放、無責任いう意味やった。  あの人は、生きるも、恋も、ほんで死に様さえも自由やった……。
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