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「ところで外島殿、大和屋の焼け跡にて棄てられた金品を狙う賊が、辺りを騒がせておりまするが、この取り締まりに我らは向かってよろしいものでありましょうか」
俺はあの後の、騒ぎの方が気になっていた。
「うむ、それには本陣の兵らを、向かわせておる。浪士組は近寄るでない。
町人やら公家様を余計に騒がすこととなりかねん。
……実はな、この騒ぎに乗じて帰郷の途についておった勤番交代の兵らを呼び戻したのじゃ。
なので、明日には会津の兵は倍になるぞ。
ある意味、芹沢君には礼を言わねばなるまいよ」
外島殿の隣に座っていた広沢殿が、口を挟んだ。
「外島氏、それはまだ口外無用にござる」
「うむ、そうであったな。とにかく、しばらくは静かにしておれ」
外島殿の言葉の裏が気にはなったものの、俺には追及できん。
この時はそのまま、お咎めなしという事で、有難く退席したのだ。
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