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あの大和屋が焼き討ちに遭うた夜から、お梅さんが消えた。
壬生の八木さんとこに探しに行きたかったけど、お梅さんが芹沢先生を好いとんのを知ってしもた今は、その気持ちすら奮い立たせられなんだ。
「藤吉、なんやしんどいんか? 顔色悪いで」
番頭さんが気をつこてくれたけど、大丈夫です、としか答えようがない。何度もため息ばかりが、口から洩れる。
だんさんは、お梅さんの行き場所がわかっとんのか、何も言わへん。
「藤吉さん」
「沖田さん! どうされたんです?」
きちっとした格好の、沖田さんが店先に現れた。
「そのかっこ」
「うん。守護職邸に呼ばれたんだ。土方さん達とね」
「それはお疲れさんでしたね」
「うん。昨日もさ、芹沢先生が暴れてね、ひどく叱られたよ」
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