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会津の使いが来たと、平山が知らせた時、わしはお梅と褥を濡らしておった。
「戦じゃ。すぐに行かねばならん」
すぐさま灯りを付け、鎖帷子を着込む。
「……のう、お梅はわしのどこに魅かれたのじゃ?」
こんな時に、馬鹿なことを尋ねたくなった。
「何を、この様な時に」
「早う答えよ」
手甲を着けながら、答えを急かす。
「強さどす。正義を秘めた、ほんまの強さどす。
ほかの男衆には無い強さを、側で見たいと思うたんどす」
その答えに、わしは満足した。その答えだけで、もうほかには何も要らぬとさえ思うた。
「そうか。
良いか、明日は何があるかわからぬ。一旦菱屋に戻れ。市中が落ち着いたのち、再び来れば良い。
行って参る」
お梅がわしの肩に、羽織りを掛けた。
「ご武運を」
背中にお梅の手が触れた。
痺れた。
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