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この頃すでに、沖田さんはごっつう強い人斬りとして、名を馳せていたんや。
「また木屋町の方で、いざこざがあったみたいやで。
それに長州の藩邸辺りは、物々しい雰囲気やって話や。死人、四、五人やて」
瓦版を片手にだんさんは、大げさに怖がって見せた。
「だんさん、貸し付けた分、やっぱり焦げ付いとりますなあ。
うちが、壬生に交渉に行きます」
それでもお梅さんは、行くと言わはった。
「……殺されても知らんで」
なんで行くなって言わへんのや!
だんさんの煮え切らん態度が、歯痒かった。
「平気どす。遅なりそうやったら、またお栄ちゃんとこの置屋に泊まります」
だんさんは黙って見送った。拳を固く握りしめたまんま。
「なんで行かすんですか?」
思わすだんさんに噛みついた。
「あれは自由なおなごや。わてでは止められん。
なあ藤吉、追いかけてお供したってや」
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