お梅

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 なんせ、菱屋は大店と言えど、妾の別宅を構えたりでける程の余裕はなかったさかい、お梅さんは同じ屋敷の奥の離れで暮らしてたんや。  それでもあの人は、そんな周りの好奇の眼なんか、全く気にすることなく、自由に母屋も、店の中ですらウロウロしてたっけ。  そのうち、噂どおりお内儀さんが実家に戻りはった。お子ができんかったんが、不仲の原因やって女衆が噂しとったけど、真偽はわからん。  俺は大坂の出や。京雀らの噂好きにはついていけん。  お内儀さんが出て行くと同時に、お梅さんが店先に立つことが増えた。  垢抜けて趣味のいい彼女の薦める品物は、おなごらの人気を得て、若い芸妓や花街で働く女の客が増えていった。  おまけに器量良しや。武家のお客も徐々に増えて、だんさんは機嫌ようそれを眺めてたっけなあ。
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