生はまこと濁流に尽きる

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  先日の、 後輩の不倫スキャンダルに やたら精神的ダメージを くらったのはそのせいだ。 あんな、 自分の“好き”だけで 突っ走れるしたたかさなんて 私にはない。 不倫がばれたからって、 会社に気遣ってもらえるような 愛らしさもない。 私にできることなんて、 当事者たちの間に立って 誰も損をしないよう お手伝いをすることくらいだ。 「……疲れた」 まだお昼にもなっていないのに、 思わず口の中で 小さくつぶやいてしまった。 考えることだけが 増えていくオトナ女子は、 自分自身が重くて つい思考に足を 取られてしまうものだ。 つい声混じりの溜め息を つきそうになって、 慌てて呼吸を止める。 詰まった息をそーっと 静かに吐き出していると、 ふいにフロアが 騒がしくなった。 .
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