生はまこと濁流に尽きる

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  この軽そうな人に いったいなにを言ったんだ、 桃さまよ。 桃さまと同じく 上司である浦川さんに あからさまにいやそうな顔を するわけにもいかず、 営業スマイルを 貼りつけ続けた。 「あのね、 ちょっとお願いがありまして」 「はい」 「ここじゃちょっと。 出れるかな?」 世間が 不愉快にならない程度に 明るく染められた髪は、 男性のわりに つやつやときれいだ。 よく見ると爪もぴかぴか。 意識高い系だ。 なんとなく 冷めた気持ちで頷き、 浦川さんに言われるまま あとをついていく。 後輩たちの視線から 逃れるように フロアを出た浦川さんは、 非常階段近くまで 私を導いた。 「いやあ、 用って用はないんだけどね、 伝言」 .
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