生はまこと濁流に尽きる

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  「壊してしまいたい、 とは」 まるでSNSの ハッシュタグを 読み上げるような 平坦な口調で、 千佳が眉根を寄せた。 けれどその瞳は ショーウィンドウの靴を 見つめている。 マノロ・ブラニクの スウェードパンプス。 マノロと言えば 子どもの頃には ダイアナ元妃、 最近では海外ドラマに どっぷり毒されている 私たちには 憧れのブランドだ。 目の前のパンプスは 日本人好みのボルドーが 値札とともに とても眩しい。 それでも10万しないのは 良心的と言える…… かも知れないのだけれど。 思考が同じところで 止まったのか、 千佳は「はああ」と 大きく溜め息をついた。 「だめだ。 どうしても似たデザインの 別のメーカーなら 3分の1くらいで買える、 という天秤を 捨てられない」 .
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