生はまこと濁流に尽きる

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  きゅるっと 音を立てながら、 千佳の未練が 指先とともに ガラスウィンドウを 滑っていく。 白く曇りかけた ガラスウィンドウに、 彼女の執念を見た。 「ねえ、 壊してしまいたいって 話だけど。 それ、 やっちゃってからの 話なんでしょ」 「千佳、 声が大きい」 「こんな、 百貨店の往来で ぽそぽそ話し出したのは そっちじゃないの」 ぽそぽそ、と 思ったのなら声の調子くらい 合わせて欲しい。 私の話に 付き合ってくれながらも、 千佳のテンションは マノロへの憧れが だだ漏れだ。 その調子で秘密の話を 垂れ流さなくても。 「カフェとかレストランで 面と向かって 話せっていうの。 いやよ、恥ずかしい」 「まあ、 それもそうだけど。 電話で聞く話でもないか」 「そうよ」 .
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