生はまこと濁流に尽きる

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  コツコツと、 私たちに見合った パンプスの重い音が ふたつ並んで耳に入る。 ささやかな 喧騒の中にあっても 聞こえるあたり、 こちらの百貨店の お上品さが見え隠れする。 こういうところを 練り歩くのに 違和感のない年齢では あるけれど、 ドラマや映画みたいに カッコよく両手いっぱいの お買い物、 というのはさすがに まだできない。 せいぜい、 最後に下の化粧品売り場で スキンケアの相談をして、 基礎化粧品を 買い替えて帰るくらいだ。 私がダイアナ元妃に 憧れていた頃、 30歳の女の人って もっとかっこいいものだと 思ってたんだけど。 「それ、 なんか好きだって 言ってるように 聞こえちゃうのは、 あたしの頭が お花畑だからかなぁ」 .
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