生はまこと濁流に尽きる

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  まだマノロを 振り返りながら、 千佳がどこか 上の空で言う。 「そんなんじゃないと思うよ。 男の人って、 好きな女性には 慎重になるもんでしょ」 めちゃくちゃ 簡単にされたもの…… というよけいな一言を なんとか飲み込んだ。 簡単に されたっていうのは、 簡単にさせたのと 同じだ。 桃さまの黒さに 押されたとはいえ、 現にあの日の私は 泣きたいほどちょろかった。 いくら親友に あの日の秘め事のことを 打ち明けたとはいえ、 それがどんなものだったかまで 言って回る必要はない。 「慎重かあ…… 慎重ねえ……」 考えている様子の 千佳の足が、 ふと止まる。 「千佳?」 「昔さあ、あたし、 坂田とエッチできそうな とこまで 行ったんだけどなあ」 .
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