生はまこと濁流に尽きる

6/40
617人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
  マノロのテンションで、 しかも半分思考に 没頭している千佳の声は まだ大きかった。 思わずカカッと ヒールを大袈裟に鳴らして 駆け寄り、 「しー!」と制する。 「ちょっと、 今頃なんの話!?」 「ずっとお墓に詰めてた、 あたしの失恋の秘密」 「今言うこと!?」 「だって、 滅多にない杏の醜聞だよ。 あたしもなにか差し出さねば」 こういうところ、 律儀な女だと思う。 でも声は抑えて欲しい。 「あたしが、 そのときのカレシのこと 気に入ってたから 諭されたのとさ、 坂田が飲み過ぎてて、 だめだったんだけど」 ──千佳の墓を暴いたら、 なんと坂田の恥が 一緒についてきた。 哀れ坂田、 せめて私は 他言しないでおいてあげるよ。 .
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!