生はまこと濁流に尽きる

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  「当たり前でしょ、 なんでもいいなら こんな男日照り 続いてないわよ」 「だからじゃん! あたしなんて一生 結婚できないかも!」 あああ、と 悲愴な声を小さく上げる 千佳の背中を、 慈愛を持って ぽんぽんと撫で回した。 どこになんのスイッチが あるのかわからないけれど、 こうして抱きしめるように 触れてあげると 千佳はおとなしくなる。 「ああ、もう。 杏優しい」 「別に……」 「杏が男の人だったらなあ。 特別な情熱は ないかも知れないけど、 楽しく暮らせそうなのになあ」 「まあね、 でも、なんかそれのほうが くやしくて、 寂しいんじゃない?」 クスッと笑って答えると、 千佳は「……完全に 同意するんだよなぁ」と 溜め息をついた。 女同士って、 なんかそんなもんだ。 .
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