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「こんな簡単なことならもっと早くおまえとやれば良かった」
「嫌で…も…二度と…やりませ…」
「来週もやるぜ」
「…嫌…で」
「次は対面座位でやろう」
「……だから…嫌…」
気が遠くなりそうだった。いや、実際、気が遠くなった。
次に総が見たのは、自分を覗き込んでいる男の顔だった。精悍で男らしい、よく見ると額や頬に傷痕がある、初めて会った時と比べたら少しは年を取っていて、巽を間にいつも反目していた男だ。どこまで付き合うのか試したいと言ったら試していいと快諾してくれて、誰も欲しがりそうにない体を欲しがった変人で、さっき、ついさっき───。
ふいに、総の頭の中で、自分の身に起きたことが次々と甦った。
「総、まだ入ってるぜ」
「嘘」
「ほんと」
背後から抱かれていた筈なのに、いつのまにか向き合うような体勢になっている。
「おまえが気を失ったから抜いて、仰向けにしたらおまえが勃ってるからそれを見たら堪らなくなって、またコンドームつけて、おまえの足を担いで入れちまった」
「あっあっ貴方という人は…意識の無い人間を…」
「だって美味そうだったから」
葉月は総の唇にちゅっと口づけた。
「…誤魔化されませんよ」
「ああ」
「貴方は変人だ」
ふっと笑った総は、しがみつくように、葉月の身体に両腕を回した。胸が合う。胸だけじゃない、引き離されていた二つのものが元に戻るように、身体の凹凸がぴったりはまるような気がした。
葉月は総の背中に腕を差し込み、強引に身体を起こした。あっというまに、来週やると言っていた対面座位になる。
「っぁ!」
大きく体勢が変えられたせいで、ようやく入れられていることを実感したのか、総の唇から悲鳴のような声が漏れた。
「なんだ、ちゃんと感じるようになったじゃないか。勃ったままだし、声も出てる」
「…そんなんじゃ……」
「それでいいんだ。それが普通だ。誰だって最中は声が出るもんだ」
総を安心させるように葉月が言った。経験の無い総にとって、自分の反応一つとっても、のちのち悩みの種になりかねない。
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