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朝食を済ませ、荷物をまとめる。さすがに大きな荷物は後々となるだろうがそれでも、この家よりはいいだろう。思い出が多すぎて、寂しくなる。
持っていくものは小物、着替え、勉強道具など学校に必要なもの、あとは……。
「――――持っていくのか?」
……悩んだがやめた。家族の写真は、きっと私を空白にしてしまう。そんな気がした。
私に何も言わず旅立つ親は、きっと良い親ではなかったのだろう。でもまた会う時は、この場所で。そう思った。
「よし、それじゃ行くか」
そう言って私の手を引いて車に乗る。走らせてる車の中で私は聞く。
「ねぇおじさん、どうしてお父さんとお母さんは死んだの?」
するとおじさんは答えづらそうに顔をしかめる。
「そうだな、最終的にはお前のためになる話だ。その話を聞いていい印象を持つか悪い印象を持つかはお前次第だ」
そう前置きして続ける。
「少しな、頑張りすぎたんだ。お前のためとはいえ、少しだけ超えちゃいけないラインを超えた。今はそれしか言えねぇよ」
「……?」
「いずれわかる時が来る。お前の名前の意味も、その時にな」
「それじゃ、なんでおじさんは私を引き取ろうと思ったの?」
あの話し合いを知っているからこそ聞ける。この事は単純に興味だった。
「……一人っ子の娘に家族を置いてやりたかったんだ。いずれ先立つ身なんだ。そんな親心もある」
そういうことか。おじさんちの子供、そんな子だったかな。よく覚えていない。
車は走る。数々の思い出を振り切るように――――
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