未来

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 あれから十数年が経った。私は至って普通に育ったし、おじさんの言葉は一時だって忘れたことがなかった。  私は知らない土地に移住して、誰も私が知らない環境に移り住むことになった。  ……それもそうだ。あの場所では私は鬼の子。つまりは―――― 「――――本当に戻んのか? あの場所に」  再三に渡ってそう聞かれる。これで何度目だろうか。おじさんは行ってほしくないような、そんな顔つきだった。 「……戻るよ。でも、お父さんとお母さんみたいなことはしない。真っ当に働いて、真っ当に暮らしたい」  それを聞いておじさんは、顔をくしゃめた。 「……ばっきゃろう、あんまり大人を泣かすものじゃねぇ」  それを見て私は笑う。おじさんが泣いたところなんて見たことない。泣くようなイメージがなかったから。 「それじゃ、行ってきます。お父さん――――」  そう言ってこれまで育った家を出る。駅まで歩き、電車を乗り継いで実家へ戻る。  思い出すのは、私の両親が死んだ理由。そして、その家業。  私の家系は所謂極道。そしてそれに手を染め始めたのは両親。私のために少しでも裕福に暮らしたかったからだそうだ。 「……ほんっと、馬鹿な親」  そう言いつつ私はそれほど憎んでいない。恨んでもいない。ただそう思うだけだ。  死んだきっかけは、私が育つにつれ稼業がバレそうになったこと。いや、周りはそれに気づいていた。それでも私は知らなかった。この性格のせいで私が一目置かれる存在になったと思っていた。  でも、そうではなく、単に君子危うきに近寄らずと言った感じの事なかれ主義。そういうものだった。
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