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事実引っ越してからはそんなこともなく普通に過ごしていた。きっとそこまで立場がある方ではなかったのだろう。
「でもまぁ、一周忌から来れなかったのはちょっと悪かったかな」
家は埃まみれだと思っていた。でも入った途端そんなこともなく、案外綺麗なものだった。
「おかえり、美玖ちゃん。遠かったでしょう? ほら、入って入って」
……誰だろうこの人。とりあえず促されるままに中へ入る。
「その様子だと、わしのことは覚えてないようだね。まぁそれもそうだよね。最後に会ったのは、あん子達の葬式の時。……全く、親不孝な息子たちだよ」
……まさか。葬式の時とあの口ぶり。合致するものがある。
「もしかして、おばあちゃん?」
そう尋ねると目の前のおばあさんは破顔する。
「あれまぁ覚えてるのかい。賢い子だ。昔からそうだったもんねぇ。今お茶いれるから待ってな」
そう言って奥へ引っ込んでいく。
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