雪遊び

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雪遊び

 私は読みかけの本から窓の外に視線を向ける。  朝から降り続く雪は、あたり一面を真っ白に染めた。  遠くで子供達のはしゃぐ声が聞こえる。    楽しそうだな、一緒に遊びたい。  だけど私は外へ出る事はできない。  病弱な私を心配した両親は、暖かい家の中から出る事を許してはくれなかった。  落ち込む私に、綺麗な振袖を着つけてくれて、沢山の本を買ってくれた。  私の好きなファンタジー小説。いつもなら本の世界に入り込めるのに、今は白銀の世界に目を奪われる。 「いいな」  一度でいいから、あのふわふわな雪の中へと飛び込んでみたい。  皆と雪だるまを作ったり雪合戦をしたりするの。  寒さで真っ赤になった手に、はぁって息を吐いて。それでも遊ぶのをやめない。  雪遊びでしもやけになってしまったら、お母さんに薬を塗ってもらうんだ。 「いいな……」  開いていたページが私のため息で揺れた。
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