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「……その女にはいつしか鬼が憑いているという噂が広まり、村人たちは女の家を襲撃しました」
手にした栞を本に挟むのも忘れて少女は男の話に聞き入っている。
「そして女は暴徒と化した村人たちの手によって生きたまま家ごと焼かれてしまったのです」
少女は窓に視線を移した。外はちょうど雪が降っていて辺りは白く染まっている。
「ねえ、あなたはここに来たの初めて?」
「ええ、初めてですよ」
「嘘ね」
パタリと本が閉じられる。
男の顔から笑みが消え、それを気にも留めずに少女は続ける。
「村人たちの言ったとおりお母様には鬼が憑いている。私にも。お母様は焼かれながら村人たちにこう言い残したの」
男の視界が真っ赤に染まる。知らぬ間に額を切られていた。
――見えない『何か』によって。
「『末代先まで祟ってやる』」
直後、男の首が宙を舞う。
絶え間なく降り続ける紅い雪は最期に男の目に映っただろうか。
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