当日

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当日

「豊島園って遊園地の?」 サクラはオレの話しを聞いて、眉をしかめた。 「だから説明するって言っただろう!」 昨夜、オレはサクラの住むマンションを訪ねた。 もちろん年明けには結婚式も予定している。 二人はそんな仲だ。深夜にサクラの家に行っても変ではなかった。 「意味がわからないよ。子供の頃に心臓手術をしたんだよね?」 サクラもオレの話しを理解しようとしていた。 「だからその子が好きだったんだって」 「幼なじみとデートするって事を言いたいの?」 あまりに話しが平行のままで、オレはサクラに話したことを少し後悔すらしていた。 「確かに相手は女の子だよ。でもその子に会うとかじゃないんだ。ココ」 オレは自分の胸を叩いた。 「ココにその子がいるんだ。遊園地が好きだった女の子がさ!」 サクラが「エッ!」と目を丸くして何かを察した。 「今から二十年前、オレはその子から大切なモノを預かったんだ。だから今日だけはその子ために一日を使いたいんだ!」 何も言わずにサクラは頷いた。 それと同時に大きな瞳に涙を溢れさせた。 「行ってあげなよ。メリーゴーランドにも乗ってあげなよ。きっとその子、喜ぶと思うよ」 「嗚呼、オレもそう思ってる」 夜通し話通したサクラは眠い目を擦り、二人、いや三人分の朝食を作り始めた。 「名前とか知らないの?」 「教えてくれなかったな」 「でもなんでその子が遊園地好きだと分かったの?」 「手術した時、夢で会ったんだ。顔も覚えているよ」 サクラはオムライスを三皿テーブルに並べた。 「もしかしたら、私たちの所にその子が来るかもね!」 「来るって?」 「毎年、今日だけはその子のために時間を使って来たんでしょ? 私だった嬉しいよ。自分の身体が優しい人と一緒に生きていけたら!」 「そうだとしてら、オレも嬉しいよ」 三人で食べたオムライスは特別、美味しかった。 オレたちは一緒に家を出た。 サクラは会社に向かう。そしてオレたちは、遊園地であの子が生きていた証を紡ぐのだ。
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