始まりの者たち

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弓を射ると言うのはかなり難しい。まず弓の弦を引くには腕力が必要である。次に、引いた弦のしなりの力の流れを片腕で抑制する必要がある。最後に、矢がブレないように、射った際にかかる弓への負担を全身を使って外に流す必要があるからだ。 「そーっと…そーっと…」 サテラは腰にある矢筒から矢を取り出せば流れるように弓に添え、引く作業までこなす。そのフォームは綺麗であり、まだまだ新人ながら才能を感じさせるほどだ。 正直に言えばサテラには才能がある。本人に言うと調子にのるから言わないけど……だが才能は能力の一つでしかなく、それだけで「使いこなせる」わけではない。経験を繰り返し、実践していくことで初めて身についていくのだ。 ---キキキィ……ビュンッ!--- サテラが矢を放つ。放たれた矢はアプトノスの頭む掛けて飛んでいく… が、軌道が逸れて首に深く突き刺さる。 ---グゥオゥ!--- 矢が刺さったアプトノスは唸り声を上げる。サテラはすぐさま矢を放つが対象が動き出すと無理やり照準を合わせなくてはいけないためどうしても狙いが定めにくくなり5本目の矢が体に刺さった瞬間アプトノスは崩れ落ちた。 これが才能の限界である。 「はぁ…うまく当たらないなぁ」 いくらうまく弓を引けるからといって 「まぁ、ろくに引いたことがないんだ。むしろ全部当たったのが不思議だわ」 足腰がしっかりして重心が安定してるからといって 「なら私すごいかなぁ!?」 そこに経験が共わなければ 「調子に乗るな!」 「あべしっ!」 「使いこなせる」はずがないのだ。
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