一体何冊読んだかしら。

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読みかけの本を膝に置く。 着物の帯がかなりキツイ。 何冊目の本だったかしら。 シリーズだからいいけど。 着物の袖がかなりジャマ。 ていうか遅すぎるでしょ。 約束の時間って何時なの。 あぁ、雪が降ってきたわ。 暖房はもう少し強めてね。 ため息だって出ちゃうわ。 もう次の本を読もうかな。 あら、これも面白そうね。 「まったく、栞を挟む暇が無いわ」 活字を追う視線が止まる。 部屋の扉が冷風を招いた。 そこには母が立っていた。 「……お相手さんから、キャンセルですって」 残念そうな視線を、私に。 いやいや私は悪くないわ。 どうやらフラれたらしい。 私は見ず知らずの男から。 それならばと落とす視線。 やっぱり栞は挟まれない。 吐息を手に持つ栞へ向け。 「あんたも早くお嫁に行きなさいな」 「今の所は栞が恋人ね」 どうにも、手放せなくて。
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