5人が本棚に入れています
本棚に追加
読みかけの本を膝に置く。
着物の帯がかなりキツイ。
何冊目の本だったかしら。
シリーズだからいいけど。
着物の袖がかなりジャマ。
ていうか遅すぎるでしょ。
約束の時間って何時なの。
あぁ、雪が降ってきたわ。
暖房はもう少し強めてね。
ため息だって出ちゃうわ。
もう次の本を読もうかな。
あら、これも面白そうね。
「まったく、栞を挟む暇が無いわ」
活字を追う視線が止まる。
部屋の扉が冷風を招いた。
そこには母が立っていた。
「……お相手さんから、キャンセルですって」
残念そうな視線を、私に。
いやいや私は悪くないわ。
どうやらフラれたらしい。
私は見ず知らずの男から。
それならばと落とす視線。
やっぱり栞は挟まれない。
吐息を手に持つ栞へ向け。
「あんたも早くお嫁に行きなさいな」
「今の所は栞が恋人ね」
どうにも、手放せなくて。
最初のコメントを投稿しよう!