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「お前が欲しい」
そう言いながら男はゆっくりとフードをとる。
スローモーションにも見えたその行為
そのフードのなかから現れたのは、赤。
暗闇で妖しく光る真っ赤な瞳。
男の整った容姿を見た瞬間、思い出した。
あぁ…この人はあの時の…。
そうか…僕は…
死んだんだ。
気づいた瞬間、なんとも言えない安心感に包まれる。
今まで張っていた緊張感や警戒心も解け、僕は全身の力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。
「僕は死んだ…?」
ポツリと自分の口から小さく溢れたのは、問いではなく確認。
それを目の前の男は肯定する。
「あぁ。人間としてのお前は死んだ。今ここに居るお前は死神だ。お前がそう望んだのだろう?」
そう。望んでいた。
もうあの戦場に行かなくて良くなる術を探していた。
その術を目の前の男が与えてくれた。
なら…
「なら、既に僕は君のものだよ。…でも、君が欲しいのは『僕』じゃなくて『僕の力』でしょ?
たとえ『僕』が君のものだとしても『僕の力』は君のものにはさせない。
それでも君は僕が欲しいって言う…?」
否、言わないだろう。
だって、『僕の力』が手に入らないなら僕に価値なんて無いのだから。
だけど、男の答えは僕の確信にも近かったそれとは違った。
「お前は何を聞いている?俺が欲しいのはお前と言ったんだ。…大丈夫。これからは俺がお前を…」
守ってやるから。
一瞬…いや、3秒ほどなにを言っているのかわからなくてフリーズしてしまった。
僕を守る…?
何から??
こんな〝バケモノ〟をなにから守ると言うんだ。
僕は愕然と彼を見つめた。
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