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空が綺麗だな…
とその場に似つかわしくないことを思う。
空は青く澄んでいて、雲はゆっくりとゆっくりと、自分の進むべき方向に向かって進んでいく。
僕はこの空が好きだ。
なのに、その綺麗な空の下で僕は…
死体に囲まれ、転がっている。
血なまぐさいこの場所で、先ほどまで多くの人が殺し合いをしていた。
僕もその中に居たのだ。
服や顔や髪には沢山の血がついている。
ドロドロと気持ちの悪いこの感覚にももう慣れた。
拭っても拭っても取れることない血。
僕が殺した人の血。
一体どれほどの人間の血を見てきただろう。
僕に傷一つ付けること出来ずに倒れていく人々。
顔を恐怖で歪ませ、
「ばっ…バケモノっ」
と言い残してこの世を去って逝くものが何人いただろう。
そんな僕もとうとう死ぬのだ。
外傷を負ったわけでもなければ寿命でもない。
僕はこの戦場でたった一人の生き残りなのだ。
そう…〝たった一人の〟
周りには死体とグシャグシャになった元戦車らしきものしかない。
ここまで来た道もわからず、本部との連絡手段もない。
つまり、陣地に帰れないのだ。
迎えをまったが、一向に現れない。
もう、僕は用済みと言う事だろうか。
自軍では「殺人兵器」と呼ばれ、戦争の度に駆り出されていた僕は、死ぬことさえ許され無かった。
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