目覚め

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目を開けると真っ暗だった。 目を閉じても開けても変わらぬ目の前の暗闇に、僕は視力を失ったのか…?と一瞬困惑する。 しかし、僕は視力を失ったわけではなかった。 ただ真っ暗な部屋で何もない天井を見ていただけ。 どうやら僕は結構混乱しているらしい。 こんなに深い眠りについた感覚も初めてで、頭がうまく回っていない。 とりあえず自分の現在状況を確認しようと、視線を自分の体に向ければ、自分にかかっている布団が見えた。 その布団の存在が僕を更に混乱させる。 …なぜ?なぜ僕が布団にはいっている?こんなことは今まで一度も… 一度も…ない。 僕は軍にとっては戦争での〝道具〟でしかない。 〝道具〟に人権などない。 〝道具〟は人間ではないのだから。 使い捨ての〝道具〟なんぞに布団が与えられるわけがないのだ。 かび臭い地下で両手両足首を鎖で繋がれていた僕。 なのに、今はその鎖も見当たらない。 …どういうことだ…? 混乱しているが、いつもと違う状況に、僕はここから出なければ…と、あの場所に戻らなければ…という考えだけが頭の中でぐるぐると渦巻く。 とりあえずここから出ようと身体を起こす。 僕が動けばそこはギシギシと音をたてる。 どうやら僕が居たのはベッドだったようだ。 起き上がり、周りを見れば、そこはこのベッド以外何もない部屋。 あるとすれば正面にあるドアだけだ。 僕はそこから出ようとドアの方に向かう。 ガチャリ 僕がドアにたどり着く前に向こう側から開かれるドア。 そこから、黒いローブに身を包み、フードを深くかぶったヤツが現れた。
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