目覚め

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「目、覚めたのか」 耳に届いた低い声。 その声でドアから入ってきたヤツが男だと判断できた。 「誰だ」 警戒しながら、いつでも相手を殺れるように意識をドアから現れたフードの男に集中させながら問う。 でも、そんなことは気にせず、男はこちらに歩み寄ってくる。 「く、くるな!」 静止を求めるが、男は止まらない。 そんな男に僕は恐怖をおぼえた。 だがその恐怖は『知らない男に自分がなにされるか』ではなく『知らない男に自分がなにするか』に対してだ。 どんどん僕と男の距離は縮む。 それに比例するように僕は焦っていく。 くるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるなくるな!僕に…っ近づくな!! じゃないと僕は… おまえを殺してしまう…っ 殺したくないんだ。もう誰も…。 そう願っても、そう祈っても。 それでもあの人たちには逆らえない。 僕はあの人たち以外はみんな殺さなきゃいけないんだ。 みんなみんなみんなみんな…殺さなきゃ…。 そう、殺さなきゃいけない… こいつを… コロサナキャ… そう思った瞬間、笑みが溢れる。 無意識の笑み。 僕は今、どんなふうに笑っているのだろう。 愉快そうにしているのかな…? だって、僕は〝バケモノ〟なんでしょ? …後一歩 後一歩入ってきたらこいつを殺そう。 そう思ったとき、男は止まった。 そして自分のフードに手を掛け男は言ったのだ。 色々な者が国のためだと偽り、私利私欲の為に沢山の人間を殺すために僕を求める言葉。 「お前が欲しい」と。
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