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久しぶりにここへ戻ってきた。
なぜか戻らないといけない気がしたからだった。
椅子に座ってあの時の約束を思い出す。
今でもずっと待っているのに、彼は来ない。
あふれ出そうな涙をこらえて机の上に載っている本を読み始める。
どれほど時間がたっただろうか。
窓の外を見ると雪が降っていた。
こんな雪にもかかわらず人がいる。
じっと見ているとどうやらこちらへ向かってきているようだった。
急に胸の鼓動が速くなる。
近づいてくるのは彼の姿だった。
玄関のドアがあいて勢いよく階段を上ってくる音が聞こえる。
部屋のドアがあくと彼が立っていた。
姿を見るともうあふれだす涙をとめる事はできなかった。
「俺、帰ってきたよ」
私の方へ近寄ってくる。
「もう・・・とっくに時間切れだよ」
抱きしめようとする彼の耳にそうつぶやく。
「え?」
そう聞き返す彼の前には誰もいない。
私は一年前に交通事故で死んでいた。
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