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静かに、静かに時が流れる。
密かに、密かにページをめくりながら。
不意に、不意に君は顔をあげる。
物憂げな瞳に写るのは、きっと物語の中の世界。
僅かに、僅かに近付く。
そっと、そっと足を忍ばせて。
不意に、不意に君は花びらのような口を開いた。
「クリスマスはいつかしら?」
「晴れ着を着ておいて、何をおっしゃるんです……」
とっくに、とっくに終わってますよ。
物語の世界にいつまでも浸っているから、この静かな時の流れを見逃してしまうのですよ。
だから、だからこそ僕は、降り積もる雪のように、静かな真昼の雪のように、貴女をずっと見ているんです。
*End*
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