1人が本棚に入れています
本棚に追加
私は卒業後、小さな音楽事務所に所属して、アルバイトをしながら、ぼちぼちライブ活動を続けておりました。
姉の卒業式は、来なくていいと言われていたのですが、叔母と一緒にこっそり出席いたしました。
「成績優秀者 文学部歴史学科 元橋ふみ子」
と、壇上で読み上げられる声が聞こえたときは、叔母と二人「ひぇっ」と驚きの声をあげてしまいましたよ。
姉はそんなこと、一言も言わないもんですから。
しかし、次に読み上げられた名前には、さらに驚かされました。
「経済学部経済学科……」
…な、なんで!?
なんでNくんがココにいるの!?
式が終わった後、姉がNくんと話しているところを見かけました。
遠すぎて、人も沢山いて、何を話していたのかまでは分かりません。
姉から先に背を向け歩き始め、
Nくんは口を結んで、脱力したようにただ姉を見送っていました。
この二人に何があったのか、私はいまだに知らないままです。
袴を着付けた二人は、そこだけ明治時代の絵画のようで、
あまりにも現実味がなくて。
姉に問いただすことが、どうしても出来ませんでした。
最初のコメントを投稿しよう!