Nくん

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私は卒業後、小さな音楽事務所に所属して、アルバイトをしながら、ぼちぼちライブ活動を続けておりました。 姉の卒業式は、来なくていいと言われていたのですが、叔母と一緒にこっそり出席いたしました。 「成績優秀者 文学部歴史学科 元橋ふみ子」 と、壇上で読み上げられる声が聞こえたときは、叔母と二人「ひぇっ」と驚きの声をあげてしまいましたよ。 姉はそんなこと、一言も言わないもんですから。 しかし、次に読み上げられた名前には、さらに驚かされました。 「経済学部経済学科……」 …な、なんで!? なんでNくんがココにいるの!? 式が終わった後、姉がNくんと話しているところを見かけました。 遠すぎて、人も沢山いて、何を話していたのかまでは分かりません。 姉から先に背を向け歩き始め、 Nくんは口を結んで、脱力したようにただ姉を見送っていました。 この二人に何があったのか、私はいまだに知らないままです。 袴を着付けた二人は、そこだけ明治時代の絵画のようで、 あまりにも現実味がなくて。 姉に問いただすことが、どうしても出来ませんでした。
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