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帰ってきた姉は、案外元気そうに見えました。
関東にお笑い番組がほとんどないと知ると、さかんに「つまらん」を連発していました。
叔母が、お笑い番組を録画したものを送ってくれるようになりました。
何度も同じものを見ているものですから、ネタなどすっかり覚えてしまって、
「うちの子ぉ、こんなメガネかけとんねん」
「ほぉほ、まだ小学生やのに?」
「青いタヌキみたいなロボット、押入れに飼っとって…」
「そらノビタやっ」
なんていうのを二人でやっては、笑いあっておりました。
姉は特に、生きる伝説と化していた兄弟コンビ『殿方まもる・席ゆずる』師匠が大好きで、正座して息をつくのも忘れたように、テレビに見入っている写真が、今でも残っています。
戻ってきて一番最初の学力テストで、姉は学年で8位くらい。
母は忘れかけていた夢がよみがえってきたのでしょう。
「お祖父ちゃんに迷惑かけたのだから、船校にいくべきだ」と言い出しました。
父は消極的でした。また自殺されちゃ困ると言うわけです。
数週間後、部活から帰ると母が父に向かって怒鳴り散らしておりました。
「親を裏切るとは、さすが元橋の人間だ!誠の心がない!」
姉は荷物をまとめ、祖父宅に一人で引っ越してしまったのでした。
そして、別の高校へ進みました。
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