謎の訪問と使い魔としての想い

9/9
388人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
 その後、終始ご機嫌だったスイレーン。部屋に戻りベッドの中でもシオンにべったりとくっついて離れる事は無かった。時々、何かを求めるような表情を見せたがシオンはそれを見て見ぬ振りを貫いた。そして、気が付けば朝となっていた。横で熟睡する彼女を尻目に全く寝付けなかったシオンは起き上がると背伸びする。 「うーん。さすがにこの状況はまずいよね」  側から見れば、致した後のような状態にも見えなくはない。それに彼女の主張の強い二つの山が谷を作り白い布から見え隠れしている。一応精霊であり使い魔なのだという事を忘れそうになる。思春期の少年には刺激の強い朝となってしまった。 「我慢出来るのかな僕は……」 「我慢しなくていいんですよ? 私はあなたが我慢出来なくなるのを見越してわざとやってますから」 「起きてたのね……」 「昨日も言いましたが、私は全てをあなたに捧げたんです。あなたが望むなら、乱暴にしてもいいんですよ? 私はそれを受け入れるだけですから」  朝から刺激の強いお言葉を頂戴する事になったシオン。ベッドにただ横たわるだけの彼女だが、それ以上に主張の強い膨らみが妖艶な雰囲気を引き立てる。昨日からになるが、シオンはスイレーンの事で気が付いた事がある。彼女はミレディ同様に自身の女らしい部分というのを理解しており、それを武器として使う事に長けているのだ。  要は男が何をしたら喜ぶのかを知っているのだ。ナターシャのように少し不器用な女性の場合は自分の好きな事をやった結果が男性を魅力する結果になるのだが、彼女達の場合はそうではなく、それを知った上で仕掛けるのが上手いのだ。 「ば、馬鹿な事言ってないでいいよ。僕はこれから準備するから寝てて」 「分かりました」  動揺している事を知っているスイレーン。パブコードを使わずとも今のシオンの精神状態が手に取るように分かる。自然とにやけてしまうのを隠すようにタオルケットを被った。そんな彼女を見ながら着替えを進めるシオン。  ふと、昨日の出来事をまた思い出す。 ーお前が何者なのかを知っているー  制服のワイシャツのボタンをかける手が止まる。一体何者なのだろう、自分の何を知っているのだろうと頭の中でぐるぐると回り始めた時に、スイレーンがタオルケットから顔を出して 心配そうな面持ちで見つめている事に気が付いた。 「何か昨日の事で思う事があるのですか?」 「少しね……」  あの人物との会話は、誰も聞いていない。が、ミレディはきっと何かを知っているというのは昨日の去り際の態度で分かった。 「シオン様のお好きにされたらいいのではないかと私は思います」 「え?」 「彼女が知っている事を聞いた方がいいと考えていたのではないですか?」 「顔に出てたかな」 「顔に出ずとも分かります。昨日から何か精神的に不安定なものを感じていましたから。多分、私が知らないところであの仮面の人物と何か言葉を交わしたのではないですか?」 「お前が何者なのか知っていると言われたんだ」  シオンから出た衝撃的な言葉にスイレーンは言葉を失う。 「何者なのか知ってるっておかしいよな……。僕は自分が人間だって思ってるのに、人じゃない何かって言われた気分だった」 「シオン様は人間です! 私はあなたの魔力を感じ取る事が出来ますし、人間のものだという事は分かります!」 「でもね、あの人は僕がウリュクハ言語を無意識で話した事も知ってたんだ」 「え……」  スイレーンも勿論ウリュクハ言語を知っている。それが始祖龍が使っていたという事も。そして、その言葉を人間がましてや少年が無意識で使う事など絶対に出来ないという事を。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!