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「覚悟は……あります」
そう言ったシオンの目をミレディは見つめる。ここで逸らしてしまうようであれば、彼はただ、その場の勢いで言っているだけであるとミレディは判断するつもりだった。
「あなたの目標さえも成し遂げられない事になるかも知れないわよ?」
「学友を救えないで、自分の夢も目標もあるわけがない。絶対に何処かに引っかかる部分が出来る。だとしたら、僕はそこまでして夢も目標も語る資格なんてないです」
シオンはミレディの目を見つめ逸らす事なく言った。
「仕方ない子ね……。分かったわ。あなたの好きにしなさい。私も出来るだけサポートするって約束する。でも、忘れないで。あなたが今した選択は後悔してももう後には戻れない。もし、あなたが嫌になって彼女を裏切るような事になっても、あなたに対しての見る目は変わる事はない」
「大丈夫です」
ミレディはシオンの覚悟に頷いた。しかし、彼女はそれを本当は止めたかった。心に根付いたものは簡単には払拭出来ない。いつまでも記憶に残るもの。周りの考えが変わり、ナターシャ自身がそれを改めようと思わない限りは意味を成さない。それこそ長い時間を掛けなればならない。数日という話ではない。数ヶ月もしくは数年数十年、下手をすれば死んでも理解されないかも知れない。
それを今からやろうとしているのだ。止めようと思うのは仕方の無い事である。だが、シオンが覚悟出来ていると言ったのだ。止める事などミレディには出来なかった。
「とりあえず、彼女の処分についてはマリア先生から何かしら返答があるはず。後は、あなたが彼女を説得する。簡単な事ではないわ。彼女の気持ちを憎しみから共存に変える事があなたがやる最初の一歩よ」
「が、頑張ります……」
「大丈夫、あなたならきっと出来る」
ミレディはシオンを勇気付けて送り出す。これから辛い事が沢山待ち受けているだろうと思いながら。
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