約束

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分からないと言った表情で横目でシオンを見る。何故、この男は自分の隣の席に座っていても平然としているのか。まるで昨日の事など既に忘れてしまったかのように。 マリアは朝のホームルームを終えると、予定変更する事なく魔武器の生成に移るという事で、移動教室となった。移動教室の際もナターシャは、シオンを警戒するように見ていた。しかし、何か動きを見せる様子もない。 一つあるとすれば、彼以外の生徒が自分に話しかけるという事はないという事。そして、避けるように彼以外は自分を遠ざけるという事。 「よし、お前達今日は魔武器の生成になるわけだが、魔武器生成は別に難しい事じゃない。ウルスアグナやってみろ」 格技室と呼ばれる場所に、生徒達を連れてやってきたマリア。生徒達全員がいる事を確認すると、ナターシャに魔武器の見本を見せるように言った。 「何故私が」 「お前は魔武器生成が出来るだろう。他の生徒はそれが出来ない。見本を見せてやれ」 「教師の貴様がやってみせるのが、普通だろう」 「何故だ?」 マリアから返ってきた返答に、ナターシャは一瞬驚くも口を開いた。 「貴様は教師だ。私は教える側には向かないし、生徒の見本となるべき職業についている貴様が生徒に分かりやすく教え、見せた方が生徒が理解した上で魔武器生成が出来る」 「ほお、見下していると言う割には他の生徒の事を考えたしっかりとした答えだな」 その瞬間、ナターシャはしまったと思った。今のマリアとのやりとりはマリアが巻いた餌だったのだ。 「違う。私は生まれた時から魔武器生成が自然と出来た。貴様ら他の種族は、他人の教え無しではそんな事すら出来ない下等な種族だからだ」 言い直すもマリアには通用しない。マリアはそういう事にしておこうとしか言わない。このマリアという教師は頭が切れる人物なのだと認めざるを得ない瞬間だった。 「ウルスアグナが説明するのは不得意だと言うから、私から説明するとしよう。魔武器は自分の魔力を具現化させ、それを己の武器として扱う事を言う。私もお前達も魔力を有しているわけだが、それを具現化させる事というのは何も難しい話じゃない。ただ、頭の中で自分が扱いやすい形状を思い浮かべるだけだ。更にその先の話は今はまだ必要ないから省くが、お前達はこの先この学園にいる間に、その先を知っていく事になるだろう」 今、生徒達に魔武器の全てを説明しても良いのだが、今説明したとしても理解するのは難しい。だとしたら必要最低限の情報を与えて、無駄な考えを起こさずにただ魔武器を生成する事だけに集中させるというのがマリアの考えである。
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