謎の訪問と使い魔としての想い

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 スイレーンを何とか落ち着かせ、シオンは明日の準備を始めた。明日はどうやら模擬戦を行うらしい。マリアが休みの前日にそう言っていたのだ。魔武器の使用は危険な為に模擬戦用の木で出来た物を使うそうだ。成績に直結するものではないらしいが、手を抜いていると怪我をする事になる故に注意しろとの事だった。 「明日は模擬戦でしたね」 「うん。ちょっと楽しみなんだ」  ここしばらく授業といっても魔法を教えてもらうような授業は無く、とりあえずは基礎知識を得るという事を目的とした授業が続いていた。シオンは別にそれに対しては全く文句は無く、どちらかと言えば楽しいと思っていた。 「私は心配です」 「何で? 模擬戦だよ?」 「模擬戦といっても少なくとも相手の武器があなたに当たれば痛みを伴います。それに、当たりどころが悪ければ死ぬ事も無いとは言い切れません」 「大丈夫だよ。これでも結構剣術には自信あったりするんだよ僕」 「そんな事を言ってるのではありません。私は使い魔ですから、あなたの身体や精神に異常をきたす事に対しての守りが私の役割です。それが出来ないのは私としては辛いのです」  パブコードで繋がれるシオンとスイレーンは、転移だけでは無く、精神的な繋がりも兼ねている。シオンが痛みを感じれば、スイレーンにも直接的な痛みは無くてもシオンの苦痛は感じる事が出来るのだ。 「当たらないようにする」 「私がその事に対して我慢出来なくなったら、相手の生徒をどうにかするかも知れません」 「いや、それはやめて下さい……」  彼女が実際のところどれ程強いのかは、シオンにも分からないが、以前のミレディとの会話を聞く限りは結構なものだと思われる。そんな彼女が相手の生徒に怒り、割り込んでくるような事があればどんな事になるのか、考えるだけでもたまったものでは無い。 「善処します」 「お願いします」  シオンは用意を終えると、寮にあるシャワールームへと行こうかと着替えとタオルを持って部屋を出ようとした。その後ろからスイレーンが当たり前のようについて来ようとした時、シオンは振り返り彼女を止める。 「駄目だって」 「何故ですか?」  シオンが止めるのは無理もない。これから向かおうとしているのは男子生徒専用のシャワールームなのだ。精霊とはいえ女性である彼女を連れて行くわけにはいかないのだ。 「これから行くのは男子生徒専用だから……」 「それって私に関係あります?」  短い期間とはいえ、スイレーンと一緒にいてシオンは思う事がある。本当はこの子頭が悪いんじゃないかと。だが、実際の所は確信犯である。 「主人の湯浴みのお手伝いは使い魔の務めです。それなのに、私からその務めを奪われるというのですか……?」 「いや、違うじゃん。それを前、マリア先生に話した時にそんな事はないって言われたじゃん」 「あれ? そうでした?」  以前、シオンがシャワールームに行く時にスイレーンが務めだと言った為、おかしいとは思いながらも連れて行った時があった。シャワールームの脱衣所でシオンの後ろからスイレーンが入って来た為、他の男子生徒から苦情が出たのだ。それをマリアに確認したところ、そんな決まりはないとひと蹴りされてしまい、また彼女に嘘をつかれたわけである。 「あんまり嘘つくと、もう信じないよ?」 「嫌です……。我慢します……」  シオンは落ち込むスイレーンにため息をつくと、彼女を置いてシャワールームへと向かった。
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