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「う……ん」
シオンが目を覚ましたのか小さく声を出す。スイレーンはそれを見て張っていた気が途切れて涙が溢れた。彼女にとって初めての経験なのだ。死なないにせよ、自分の主人を守り切れなかったというのは余りにも辛かった。
「うわぁぁあん! シオン様〜!」
「え、痛いっ! 何!?何事!?」
首が痛いのと号泣するスイレーンに全く意味が分からないシオンは、あやすように彼女の頭をなでた。腕を組んでそれを見ていたミレディは何も言わずに脱衣所を後にした。彼女が出て行く姿を見ていたシオンだったが、声をかける事を彼女が拒んだ気がして何も言えなかった。
「スイレーン、大丈夫だよ」
「ぐすっ……私がついていながら情けないです……うっ」
「いや、あれは僕が弱かったからだよ……。僕が君についてくるなって言ったからこうなったんだ。君のせいじゃない」
全く抵抗出来なかった。あの仮面の何者かに首を掴まれて持ち上げられ、抵抗どころか声すら出なかった。あのままスイレーンが来なければ確実に死んでいたとシオンは素直に思った。
「君のおかげで僕は助かったよ。ありがとう」
戦うどころか助けてもらってお礼を言うことしかできない自分に落胆せざるを得ない。そして、あの仮面の人物が言っていた〝お前が何者なのかを知っている〟という言葉がシオンの心に何よりも爪痕を残した。
「もう、私はあなたから片時も離れません。今もシャワールームまでついて行きますからね!」
「え、ちょまって! それはさすがにまずいよ!」
「駄目だと仰るなら……」
「なら……?」
「ここで私は死にます」
そう言うと、スイレーンは自分の首に向けて魔法を放つ準備を始めた。シオンはそれに焦りながら手を掴む。
「何してんだよ!」
「精霊といっても己に魔法を放てば自分の命くらいは刈り取れます。私に使い魔としての務めをさせないと仰ったということは、私に死ねと言っていることと同義です。だから、私は死ぬだけです」
彼女は本気だった。掴んだ腕は微かに震え、先程泣き腫らした筈の目には涙が溜まっている。シオンはため息をついて彼女を見ると、また頭をなでた。
「分かったよ……じゃあ頼む」
「……! はい!」
スイレーンは鼻歌を唄いながら、首が痛くうまく服を脱ぐことが出来ないシオンの服を脱がしていく。そして、タオルで下腹部を隠しながらシオンはシャワールームに入った。
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