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そうは言ったものの、使い魔とはいえ女性に裸を見られるという事に関して免疫のないシオンは、緊張の面持ちでシャワーのお湯の栓をひねる。勢いよく心地の良い熱さのお湯がシオンの頭に降り注ぐ。
「落ち着け……痛っ……!」
首を痛めている事を忘れ、下を向いてしまい首を押さえる。
「シオン様、首の痛みは大丈夫ですか?」
「う、うん。大丈夫だよ」
スイレーンが少し遅れてシャワールームに入ってきた。シオンが首を押さえていた為、彼女は痛いのだと思い駆け寄る。シャワーを頭から浴びていた事で目を開ける事が出来なかったシオンは、急に駆け寄って首を触るスイレーンに驚いて顔を上げてしまった故に彼女に大量のお湯がかかってしまう。
「ひゃっ」
「ごめん! 大丈……夫!?」
元々、白い布を服のように纏っているだけのスイレーン。お湯がかかった事でその白い布が肌にくっついて身体のラインを綺麗に浮かび上がらせてしまっている。
「シオン様?」
「へっ!? 」
本人は全くそれに気が付いていないようで首を傾げているが、シオンは元から幾度か抱き着かれた時に、彼女もまたミレディやナターシャのように女性特有の部分がかなり主張しているようには感じていた。
「大丈夫……ですか?」
心配そうな面持ちで見つめる彼女に、シオンは言葉が見つからない。視線の先には濡れてしまった金色の少しウェーブのかかった髪の毛と水滴が付着した肌。その姿はやけに色っぽい。
「あの、服がね……」
「服……?」
スイレーンは自分の身体を指差したシオンに、不思議に思いながら自分の身体へと目を落とす。シオンの身体の事が何よりも心配だった彼女は自分の服が濡れてラインがくっきり出ている事に今気が付いた。
「シオン様も男の子ですもんね……」
「すみません……」
二人の間に微妙な空気が流れ始めた時、スイレーンが意を決してシオンの顔を見た。
「シオン様が望むのなら……私は女としてあなたにご奉仕します。シオン様もそういうお年頃だと思いますから……」
それはシオンにもスイレーンが何を言っているのかは勿論理解出来た。でも、それを望んで彼女を使い魔にしたわけではない。
「そういうつもりで僕は君に……」
「分かっています。あなたがそう答える事は分かっています。あなたは優しい方ですから、そういう事は考えていないという事は百も承知で言いました」
はしたない女だと思われても良い。必要な女でありたいとスイレーンは思っていた。もう既に彼女の中で、主人と使い魔という関係が早くも崩れそうになっていた。
「今、僕が精一杯言える事は少なくとも君は僕にとっては特別だという事だよ。好きとかはよく分からない。でも、今はそれで満足してもらえないだろうか?」
「特別? 本当ですか?」
「うん」
自分が生きてきた数百年の中で、最も嬉しい一言だった。十五年と少ししか生きていない少年に光の精霊である自分が言葉だけで良いように扱われている。本人にはそんなつもりはないというのはスイレーンにも勿論分かっている。
しかし、なんと自分は単純なのだろうと思わざるを得ない。この目の前にいる少年が今の自分の全てなのだとスイレーンは再認識した。
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