堕天使ガブリエル

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「ふふ。男を教えてあげましょうか?」シャレにならない声が聞こえてきた。「ボク今日、凛のこと前よりずっと好きになりましたよ。」 「それはどうも。」 この場合、はぐらかすしか選択肢はないだろう。そう思った矢先、くるんと転がるように移動してガブリエルが布団の中に滑り込んでくる。 「こっち来ちゃダメ!」 言葉は何の意味もなく、髪に長い指が差し込まれてがっちりと顔を抑えられ唇が降ってきた。ちゅっと唇に触れる軽い音が響く。 「ジュワイユーノエル(メリークリスマス)。」 耳元で濡らすように囁かれる。どきりと小さく胸が鳴った。 「ノエルを祝ってキスするんですよ。」 さらりと何でもないことのように言って、美しい顔でにこりと微笑む。その顔は小さい頃読んだ絵本に出てきた天使のようだ。この顔に騙されてはいけない。それは恋人同士の話だろうと思いながら、突然のことに反応が遅れた。浴衣が合わさった胸に不意に手を差し込まれ凛は慌てる。 「やっ…何して…。」 「この浴衣のコーゾー(構造)ってはだけさせるためにあるんですかねー。」 のんびりとした口調と相反するように手が肌の上を弄る。 「ガブちゃん、これ以上こういうことすると僕は部屋に帰るよ。」 「はぁい。」 おとなしく返事をしておいて、はだけた胸元に舌を伝わせるから、その刺激に凛は小さく胸を反らせた。 何もなかったことにするように「タタミっていいですねぇ」と呟きながら、またころんと布団に戻っていく。この大人しさが朝まで続くかはわからない。こんなとこにいたら本気で貞操が危ない。ばさりと上半身を起こして本格的に部屋に戻ることを決める。
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