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「凛ちゃーん、起きてるの?朝ごはん出来てるよー。」
障子の向こうから響く少女の声に、ふたりはぴたりと動きを止める。
「ありがと。すぐ行く。」
凛の声に応えるようにぱたぱたと人の気配が遠ざかる。
「凛からのノエルのプレゼント、欲しいもの思いつきました!」
「わーーー、聞きたくないっ。プレゼントあげるなんて一言も言ってない!」
すかさずガブリエルから逃れ、襟をしゃんと引き、身を整える。
「ゴショー(後生)ですから、その帯だけ引かせてくださいーーー!」
クリスマスの一日中、ガブリエルに強引モードで付きまとわれることになりそうだ。今日一日で済めばいいけれど…。凛はふぅと息をつきながらも、一番怖いと思ったのは自分の体がキスや滑らかな指を完全拒否しなかったことだった。
「ガブちゃん、着替えるから帯引いていいよ。」
「ボクが求めてるのはこういうシチュじゃないんだけけどなー。もっとエロいやつ…」ぶつぶつ言いながらもしゅるりと帯を引く。
「後生って一生のお願いってことだからね!もう聞いてあげたからね!」
「えっ、そうなの?」
一瞬きょとんとして、その後すぐさま怪しい笑みを漂わせる。凛の肩抱くようにして、ふわんと厚い掛け布団の上に体を落とし、両手両足で覆いかぶさるようにその体を捉える。
「じゃ、有効に使わせて貰わなきゃダメですね。」
大胆に押し倒しておきながらも、ガブリエルが手を出してこないから、凛はこくんと息を飲み、微かに体を震わせた。
「あのね凛、朝眠ってるキミを見て、ボクは本当に凛のことが好きだなぁって思ったんですよ。ボクがひとりで誰も何も知らない日本に来てから、ずっと笑っていられるのは、いつも凛が側にいてくれるからなんだって気付いたの。」
鮮やかな薔薇色に濡れる唇から紡がれる言葉は、いつものようにふざけてはいなくて優しい。澄んだ湖の色を湛えた深いブルーグレーの瞳で包み込むように見つめられる。
「ボクの、恋人になってください。」
とくん、とくん、とくん。胸が鳴る。
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