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「ごめん、無理。僕、ストレートだもん。」
「はぁぁぁ?!抱かれてみりゃボクたちすごい相性いいってわかるって。とりあえず抱かせろ!!」
逃げようにも、押し倒されてがっちり捕らえられている凛はきゅっと身を縮める。浴衣はすっかりはだけ、素肌が晒されている。その勢いの予想に反して、体が柔らかく包み込まれる。
「凛、好き。こんな可愛い格好で煽られて、それでも自分を抑えてるのは、凛を大事にしたいからです。だからちゃんと考えて。」
ふわんと心が浮いてしまう。こんなに真直ぐに伝えられてはたまらない。
「き、昨日まで薫くんのことが好きだって言ってたじゃない。」
「カオルは理想…っていうか…オカズ?」
「ぎゃーー!!ガブちゃん微妙に日本語おかしいから!変なこと言わないで!」
「だって凛のこと好きだって気付いちゃったんだから、仕方ないでしょう?…キスはしてもいいですか?」
随分と長い沈黙がふたりの間に流れる。びっしりと長い睫毛が並ぶ目で見つめられて距離が埋められていく。しっとりした柔らかい唇が熱を持った息とともに触れ、深く合わされる。肌の表面がさわさわとざわめくのを感じる。今までの表面で音を立てるキスとは違う。
あぁ、ヤダ…。その甘さに顎が上がり、体の芯がじんと痺れる。
はっ、まずい!!!胸のあたりを伝い始めた手を勢いよく払う。
「どさくさに紛れて触るな!」
「キスは許してくれたのにー。」
「許してない!ご飯行くよっ。」
ガブリエルを押し返して起き上がり、もう着替えるのも面倒になって、浴衣をかき合わせ上を羽織る。ガブリエルの浴衣も整え羽織を着せてやる。そのまま手首を引いて部屋を出る。
やっと、やっと、やっと、部屋を出ることができた。凛はもう一度長い一日を覚悟する。手を引かれる天使はふわりふわりと笑みを浮かべている。
fin.
Joyeux Noel !!!
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