堕天使ガブリエル

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「おっふろ、おっふろ♪」 離れの湯殿に続く静かな廊下を、ガブリエルはうきうきとした足取りで凛の後をついてくる。数メートルの飛び石を渡るため扉を開けると、冬のしんとした冷たい空気が心地よく体を纏う。離れには間接照明でぼんやりと灯りさす着替えのための小さな和室の先に一般家庭には随分大きめの檜風呂がある。 「うわー、温泉みたい!!嬉しい!!」 ガブリエルが風呂を覗いて無邪気に喜んでいる。 「一緒に入りましょう!」 「ヤダ!」 凛は素早く返した。確かに浴槽は大人2、3人がゆったりと入れるサイズではある。 「ボクは日本の温泉というものに超ロマンティックな妄想を描いていたんですよね。」 「エロティックの間違いだろう!」 「違いますよ、酷いなー。和のココロですよ。セイヒツ(静謐)な湯にのんびり浸かって癒されるっていうね!それを共有するのが温泉でしょ。さっき言った通りボクだって誰かれ、エロい目で見ませんよ。ボクが好きなのはカオルですから!」 「指一本触れんなよ!」 結局、ちゃぷんと水音だけが響く風呂にふたりで入っている。照明の強度を調節できるので浴室は薄暗く、趣きある内装は本当の温泉のような雰囲気で、凛はそれほどガブリエルを意識しなかった。 「こんなお風呂に毎日入れる凛は幸せですねー。」 ガブリエルが気持ち良さそうに伸びをする。手足が長く、するりと細い体はどこか幼さを残している。 「そう?もっとちっちゃいお風呂もあるから、人が少ない日はこっちは湯を張らないよ。」 「凛って、ホンポー(奔放)な感じするのに、実は気を遣いやさんですよね。今日だって一番周り見て動いてたし、なんだかんだ言っていつもボクの面倒見てくれるし。」 「慣れてるからね。小さい時から接待だなんだって大人の中連れまわされて。」
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