堕天使ガブリエル

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「そうなんですか。じゃあ凛が会長になるんですね。」 「うん。薫くんがあれだけのことやっちゃったからなー。次ってのは厳しいよね。薫くんみたいなカリスマ性って僕にはないから。」 薫は全国レベルで、テレビ、雑誌などのメディアに露出し、地元のイベントには出席を要望され、学園の宣伝に大きく貢献した。薫が持つ魅力が多くの人を惹きつけ、それはもう『仕事』と言えるほどの激務を彼はこなした。簡単なことではなかったのは知っている。ぎりぎりに追い詰められた姿を何度も見た。それでもしゃんと前を見て進む姿に、その美しさが失われることは決してなかった。 「凛にはカオルにはないアイドル性がありますよ。ショウシン(正真)オタクのボクが言うんだから間違いないです。」 ほかほかと立ち上る湯気の間で天使が柔らかく微笑む。妙に優しく言うものだから、柄にもなく照れ、心がふやふやと揺れた。小さい頃から可愛いとかアイドル顔と言われるのは好きではない。それでも利用できるものは利用し尽くそうという覚悟はとっくにあった。ガブリエルが言ったことはそういうこととは意味が違うと分かる。 「ん…。ありがとう。」 照れを隠すように、ちゃぷんと湯に身を沈める。 「可愛い…、凛。」 天使がゆるりと距離を縮めてくる。まずい!油断した。こいつはただの天使ではなかった。凛は風呂の端にぎりぎりまで身を寄せ、くるりと反対を向く。
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