+地の文

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+地の文

   しんしんと降り積もる雪の細やかな音響さえも聞こえてきそうな静謐さに包まれた部屋では、多忙を極める世間など他人事だと言うように穏やかな時間が流れていた。  本のページを捲る手を止めて、そろそろ頃合いかしらと少女は机の上に置いていた栞を手に取る。  その拍子に壁掛けのカレンダーが視界に入った。  少女は「あっ……」と、吐息を漏らすと、視線を落として自らの装束を見る。 「気合いを入れてめかし込んだけれど、まだ12月だったのね」  初詣にはまだ早い。少なくとも後15時間は待たなければ初詣として成立しない。  世間の賑わいから隔絶された部屋の主は、常識にやや疎いようだった。
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