Iがある場所で(3)

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リオとは図書館で別れて、ヨウスケは一人で家路についた。 マンションの五階まで上がり、玄関ドアに鍵が掛かっているか確かめていると、向かいのドアが開いてホノカと葉山が出て来た。 「勉強、ご苦労さん!」 「帰り?」 葉山がズボンの中にシャツを突っ込み、ホノカはさっきのタンクトップとは違うTシャツを着ていた。 「嗚呼!」 「そこまで送ってくる!」 ギターケースを持つ葉山の後をホノカが追って行った。 ホノカの家は親が留守がちで、さっきも二人きりだったはずだ。 そこで何をしていたのか、ヨウスケは考えてくなかった。 「ただいま」 幸い、ミユキは家にいた。 ヨウスケが帰宅したのを知って、テレビを観ていたミユキが「オヤツ食べる?」と言った。 「ねぇ、今度、ホノカたちと海水浴に行くんだけど、海パンってあった?」 「学校のじゃダメなの?」 ミユキは隣の部屋に移動し、タンスの奥を調べ始めた。 ヨウスケは後に続き、ミユキと並んで引き出しを見渡した。 「ソレはママのビキニ!」 真っ黒な布地をヨウスケが手に取ると、ミユキが答えた。 「こんなの持ってたの?」 広げでみると、三角のカップが小ぶりに見える。 正直、ヨウスケはこれで収まるのだろうかと思った。 「サイズを間違えたの。ママにはちょっと小さくて着てないのよ」 一昨年、ミユキは保育園で使うからと急きょ近場の店で試着もせずに水着を買った。 家で着てみたものの、全く胸がカップに収まらず、そのままタンスに寝かしていた。 「ねぇ、ママ。これ友だちにあげてもいい?」 「いいけど、ホノカちゃんには小さいと思うわよ」 「アイツじゃないよ。佐伯リオって娘」 「ならいいけど、サイズが合うのかな?」 ミユキから水着を貰ったのは良いけれど、ヨウスケが手渡すのは説明が難しい。 どうやってリオに渡せば良いのか分からなかった。
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