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――ジリリリリ
「……」
けたたましく鳴り響く目覚まし時計を力任せに叩くと、ジリッと不恰好な悲鳴を上げて静まった。
まだ寒い、冬の朝。
私の体温で温まっていた布団が心地よくて、ころりと猫のように丸くなる。
古館聡子(フルダテサトコ)。
古風な名前をたまにからかわれる事以外は、普通の女子高生。
時折見る不可思議な夢が、最近の悩み。
前は半年に1回とか忘れた頃に見ていたけれど、ここ最近は3日と空けずに夢を見る。
顔の輪郭はおぼろげで、表情も判らない女の子と何かの約束をする夢だ。
何の変哲もない、日常に近いその夢を見た日は決まって身体がだるい。
布団の中は暖かいのに、指先がひどく冷たい。
かちりと唇が震えているのは――恐怖、なんだろうか。
どれだけ考えても答えの出ない"約束"に、焦りが生まれる。
「……約束、って。何」
誰に向けるでもない問い掛けは、しんと静かな部屋に落ちた。
当然、答えなんか無い。
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