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「わ、ひどい顔。また夢見たの?」
「……コト……おはよ」
教室に着くなり、コト――藤形琴子(フジカタコトコ)は真ん丸な目を見開いて私の顔を覗きこんできた。
挨拶もそこそこに椅子に座るように促され、素直に従う。
自分で思っていた以上に、足に力が入っていない事に気付く。
ドアからすぐそこ――教壇の真向かいの席に向かうだけで、ひどい疲労感に襲われた。
「昨日も見たって言ってたじゃない。なのに、今日も?」
「うん……」
コトは、入学式の日に前後に並んだ時から親友と呼べる存在だ。
きらきらと可愛い名前が多い中、やたらと古臭く感じてしまう名前のせいで自己紹介が億劫で、それをわかってくれる子が居た事がすごく嬉しかった。
誰にも――親にすら言った事のない、気にかける必要もない夢の話が出来るほど、仲良くなっていた。
いつだってコトは真剣に聞いてくれて、次第に感覚が狭くなり、体調にまで異変を来たすようになった事を心から心配してくれている。
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