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「ねえ……それ、本当に心当たりないの?」
「心当たりって?」
「だって、夢って何かを示すっていうじゃない。こんなに頻繁に見るなら……」
コトの言葉を遮り、ぶるぶると首を横に振った。
夢占いなら何度もした。だけど、この夢に対する明確な答えなんかどこにも無かった。
もちろん、心当たりなんかない。
「……最近寒くてちゃんと寝れてないからだよ。ありがとね」
笑顔で言ったつもりだったけれど、眉尻を下げてしまったコトの表情を見ると随分情けない顔をしてしまったのだと自覚する。
取り繕うとした途端、開け放ったドアから担任が現れたせいで出来なかった。
ただの夢じゃないって事は、うすうす感じてはいたけれど。
だからって、私に出来る事なんて何も無い。深い溜息を吐いて、HRを始めた担任の顔を見上げた。
そして、息を飲んだ。
見慣れた担任の顔が、まるで粘土を捏ね回したように目も鼻も、口も――総てがぐちゃぐちゃになってしまっていたから。
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